相続相談の概要
相談者:A様55歳 某法人社長
初回相談日:平成24年9月
相談者Aの祖父が会長であったが死亡、相続人はその妻と孫A(相談者)が顧問税理士を通じ、相続財産(不動産)の評価と相続税対策及び土地の有効活用、贈与税の特例等、相続対策全般についてコンサルティングの依頼をうけた。
【依頼内容】
(1)相続発生時の手続きの助言
(2)相続評価減対策の提案
(3)適切な贈与による相続財産の圧縮
(4)遺産分割協議書の作成
【相談内容】
相続発生後の手続については顧問税理士と司法書士と打ち合わせの上、スケジュール、内容について具体的な一覧表を作成し説明し理解してもらう。
贈与等による現金資産の圧縮はすでに行われていたので依頼者に説明した。
遺産分割協議書についても説明し理解の上作成した。
現状資産ポートフォリオの把握と分析・提案まで
■お客様から下記の書類資料の提出を受けました。
1固定資産税明細書(評価証明書)
2所得税確定申告書
3法人税確定申告書
4不動産売却・購入時契約書等
5相続人一覧関係図
6保険証券等
7その他資産に係る資料
■次に現状把握調査を行いました。
【調査財産】
1所有土地建物及び借地権(海外も含む)
2現預金
3有価証券
4その他財産
【調査内容】
1物件現地調査
2資産評価
3相続税額の分析
4法人税額分析
5その他相続人のヒアリング
■調査分析結果の提出と説明をしました
1財産評価一覧
2資産現状分析報告書
■資産対策提案書作成し説明する
1資産対策項目の提示と効果の提案
2相続人からのヒアリングによる提案の選定あるいは変更
3遺産分割の助言と解決ご提案
4将来シミュレーション
5その他
★対策内容に基づき具体的な物件と建築の依頼をうけ現在進行中である。
相続相談の概要
相談者: A様51歳 某大学教授
初回相談日:平成24年4月頃
父親が造園業を営む会社のご長男様からの相談でした。
【相談内容】
家族構成は父(76歳)、母(75歳)、長男(51歳)=相談者 長女(49歳) 次女(46歳)。
造園事業は父、母、長女で切り盛りしている会社で公共事業関係が多く比較的安定(年商約1億円)しているが、父が脳梗塞で車いす生活になり、母も高齢、長女の夫も病弱なためとしては会社を廃業し引退を考えているので今後事業を縮小していきたいという希望がある。
また、所有財産に遊休地が多いため固都税の負担が多く、何か有効活用をして負担を軽減できないものか。と考えている。
今回依頼者である長男は東京都内の某大学の教授で別世帯のため家業には携わっていないが、このような状況で、仮に父が亡くなるようなことがあれば、相続税はどのくらい発生するのか、稼業の縮小も含め相続対策は必要なのかあるいは、必要ならばいかにしたらいいのかを総合的な見地から助言をしてほしいとのご依頼がありました。
また、相談者は自宅マンションの売却も考えており、不動産投資にも興味があり、どのようなものかアドバイスしてほしいというのが依頼でした。
【現状ポートフォリオ分析】
まず現状分析ということでA家の財産及び所得のエビデンスをいただき分析しました。
以下の流れで、ポートフォリオを調査分析し対策を実行します。
以下、調査後に提出した現状ポートフォリオ分析の報告書となります。
名称、地名は未公表とさせていただきます
現状ポートフォリオ分析のご報告
1. 相続及び相続税に関する事項
(1) 財産の概要
〈現状の財産内訳〉 (単位:千円)
財 産 |
金 額 |
割 合 |
土地 |
600,244 |
80.47% |
建物 |
32,225 |
4.32% |
現預金 |
74,382 |
9.97% |
有価証券 |
36,018 |
4.82% |
その他の財産 |
3,015 |
0.42% |
合計 |
745,884 |
100% |
※有価証券の内訳は全自社の株式です。
〈現状の土地の内訳〉 (単位:千円)
不動産の所在 |
地積 (㎡) |
相続税評価額 |
割合 |
評価率 |
**市/資材置場 |
140.00 |
3,465 |
0.58% |
100% |
**市/雑種地 |
307.00 |
7,598 |
1.27% |
100% |
◎**駅前/駐車場 |
301.84 |
27,026 |
4.50% |
66.86% |
**市/雑種地 |
1,000.00 |
74,088 |
12.34% |
100% |
◎ 貸倉庫底地 |
316.46 |
13,304 |
2.21% |
100% |
長女/自宅脇雑種地 |
393.00 |
18,820 |
3.14% |
100% |
◎長女/自宅 |
297.71 |
14,257 |
2.38% |
100% |
◎自宅 |
1,307.23 |
121,000 |
20.16% |
100% |
外環沿/雑種地 |
962.00 |
85,398 |
14.23% |
100% |
◎事務所 |
547.96 |
44,910 |
7.48% |
85% |
◎ /貸地 |
819.00 |
42,578 |
7.09% |
80% |
**市区画整理地 |
1,478.00 |
147,800 |
24.62% |
100% |
合 計 |
7,870.20 |
600,244 |
100% |
- |
◎内利用地 地積3,590.20㎡(45.62%) 評価額 263,075千円(43.82%)
〈相続税の推移〉 (単位;千円)
平成24年度の実効税率 |
29.98% |
|
年 次 |
課税価格 |
相続税 |
現 状(平成24年) |
652,538 |
195,641 |
1年後(平成25年) |
656,970 |
197,637 |
2年後(平成26年) |
661,394 |
199,628 |
3年後(平成27年) |
665,817 |
201,619 |
4年後(平成28年) |
670,238 |
203,606 |
5年後(平成29年) |
674,657 |
205,596 |
6年後(平成30年) |
679,070 |
207,936 |
7年後(平成31年) |
683,483 |
209,569 |
8年後(平成32年) |
687,895 |
211,554 |
9年後(平成33年) |
692,307 |
213,539 |
〈配偶者税額軽減の適用の有無による相続税比較〉 (単位:千円)
配偶者税額軽減の 適用の有無 |
一次相続に係る 相続税(①) |
二次相続に係る 相続税(②) |
合計 (①+②) |
有り (奥様が50%相続) |
97,821 |
66,381 |
164,202 |
無し (奥様が相続しない) |
195,641 |
0 |
195,641 |
差 引 |
|
|
31,439 |
◎万一のお父様の相続時には、一次相続の場合の税額のご負担及び二次相続の税額を考えますと配偶者税額軽減を適用した場合の方が、相続税の合計額は31,439千円(平成24評価の場合)少なくなります
◎万が一の相続発生から相続の申告期限までは10ヶ月です。相続税の申告時に財産が未分割の場合は配偶者の税額軽減が受けられません。これだけの財産をお持ちであれば、事前にある程度の分割案を検討しておく必要があるでしょう。
※配偶者税額軽減・・・配偶者が法定相続分若しくは1億6000万円以下の相続財産
取得した場合の相続税が軽減されます。
(2)相続税の納税方法について
◎お父様の、配偶者税額軽減を適用した相続税の納税は、手持現預金で賄いきれないのが現状です。
相続税額(一次) 97,821千円
手許現預金 74,382千円
差引納税不足額 △23,439千円
相続税額(二次) 66,381千円
差引納税不足額 △89,870千円
(3)相続税に関する問題点
① 所有財産のうち、土地の占める割合が多い(財産の約80%)こと。また、更地評価(評価率100%)となる土地が多く、有効活用がなされていないこと。
→有効活用による土地の評価額の引き下げが必要です。
② 相続税の納税のためには、手持現預金が不足しており、納税資金が確保されていない。
→不動産の売却による流動資産の確保又は資産の組替と不動産の有効活用による納税資金確保のための資金源を作る必要があります。
③ 換価性のない自社株式の相続税評価額が比較的高い。
→自社株式の評価の引き下げ
2. 所得及び所得税・キャッシュフローに関する事項
(1)収入状況の概要
〈現状の収入の内訳〉 (単位:千円)
収 入 |
金 額 |
割 合 |
不動産 |
11,851 |
66.32% |
給与 |
4,200 |
23.50% |
雑収入 |
1,819 |
10.18% |
合計(①) |
17,870 |
100.00% |
◎不動産の評価額に対する不動産収入の割合が低い状況です。
不動産の評価額(平成24年) 632,469千円①(土地+建物)
不動産収入の金額 11,851千円②
☆不動産活用効率(②/①) 1.87%
→不動産活用効率の目標値を定めて計画していく必要があります。
(先ずの目標として概ね6%~7%)
〈自社からの収入の内訳〉~平成23年度~ (単位:千円)
収入の種類 |
内 訳 |
金 額 (②) |
全体に占める割合 (②/①×100) |
不動産 |
事務所家賃 |
3,600 |
20.14% |
倉庫家賃 |
1,200 |
6.72% |
|
地代(鷹野1丁目) |
1,200 |
6.72% |
|
給与 |
役員報酬 |
4,200 |
23.50% |
合計 |
|
10,200 |
57.08% |
◎収入全体に占める自社法人の関連収入の割合が非常に高くなっています。(57.08%)
→収入構造の安定化を図るためには、第三者からの収入を増加させ、自社法人の収入におけるシェアを下げる必要があります。
(2)所得税等の推移 (単位;千円)
所得税等の実効税率 (平成24年度) |
30.06% |
||
年 次 |
収 入 |
課税所得金額 |
所得税等の額 |
現 状(平成24年) |
15,290 |
9,700 |
2,916 |
1年後(平成25年) |
15,290 |
9,459 |
2,866 |
2年後(平成26年) |
15,290 |
9,476 |
2,874 |
3年後(平成27年) |
15,290 |
9,479 |
2,875 |
4年後(平成28年) |
15,290 |
9,483 |
2,877 |
5年後(平成29年) |
15,290 |
9,486 |
2,879 |
6年後(平成30年) |
15,290 |
9,497 |
2,885 |
7年後(平成31年) |
15,290 |
9,498 |
2,885 |
8年後(平成32年) |
15,290 |
9,500 |
2,886 |
9年後(平成33年) |
15,290 |
9,502 |
2,886 |
累 計 |
|
|
28,829 |
※賃料収入・修繕支出等により税額は変動いたします。
◎財産の概要でもふれましたが、不動産の利用状況は地積での利用割合にても45.62%でした。また、お父様の確定申告書を拝見すると、経費算入外固定資産税の割合が多いことが明らかとなります。
・平成23年度固定資産税 4,528千円
・内、経費算入固定資産税 2,344千円(固定資産税の内の51.76%)
→更なる不動産の有効活用の検討余地があります。
◎個人キャッシュフローとしては、所得税・生活費差引後、手許現金として、4,382千円確保できていますが、不動産収益構造を見直すことにより、更なるキャッシュフロー増大を見込むことが可能です。
→不動産の有効活用による資金の確保。
→経費外固定資産税の経費化。
◎納税額が多額な状況とは言えませんが、更に収入の歩留まりを向上させるためには資産管理会社の活用も検討する必要がありそうです。
3.自社法人及び法人税に関する事項
(1)役員報酬及びお父様への地代家賃について
〈法人の収入に対する役員報酬等の金額〉 (単位;千円)
年 次 |
売上高 |
役員報酬等の金額 |
売上に占める割合 |
平成21年6月期 |
142,526 |
20,710 |
14.53% |
平成22年6月期 |
116,796 |
27,650 |
23.67% |
平成23年6月期 |
100,579 |
27,650 |
27.49% |
〈役員報酬等の金額の内訳〉 (単位;千円)
|
役員報酬4名 |
石出利勝様地代家賃 |
合 計 |
平成21年6月期 |
14,950 |
5,760 |
20,710 |
平成22年6月期 |
21,650 |
6,000 |
27,650 |
平成23年6月期 |
21,650 |
6,000 |
27,650 |
(2)法人の財務内容等
◎法人として借入金はなく、法人の直前期貸借対照表をみると、
流動資産 37,167千円(内、現預金28,733千円)
流動負債 5,272千円
負債は、上記流動負債のみのため、流動資産で充分賄うことが可能です。
財務の健全性は高いと思われます。
◎一方、法人の直前期損益計算書をみると、
売上高 88,503千円に対し、
材料原価 16,161千円(売上比18.26%)
労務費 28,077千円(売上比31.72%)
となっております。工事原価における労務費の割合も比較的高いです。
(3)法人税の問題点
◎法人は同族経営されておりますが、事業承継、社員の高齢化について検討する必要があります。
◎お父様は、所得税の分析でみたように、法人から半分以上の収入を得ています。また、法人の役員報酬の構成は下記の通りとなっておりますが、今後、役員様の健康状態等に鑑みて、支給金額の見直しも必要になるかと思われます。
〈直前期の役員報酬年額〉 〈お父様に対する地代家賃〉
(単位:千円) (単位:千円)
お父様 4,350 事務所家賃 3,600
お母様 4,100 倉庫家賃 1,200
長女様 6,000 地代(T一丁目) 1,200
長女の夫 7,200 計 6,000
計 21,650
今 後 の 方 向 性
① 相続に関する事項
1.自社法人で賃借している事務所建物を新設法人へ売却、並びに無償返還の届出書の提出
⇒資産の分散とそれに伴う権利金認定課税の防止。
2.**駅前駐車場並びに外環沿の土地の有効活用
⇒無償返還の届出又は貸家建付地評価減。
3.植木を保管している土地
⇒現在有効活用されていないことと効果的な有効利用の方法を模索することが困難なため、売却して資産の組替えを行う。(6へ)
※但し植木他を保管する必要性について確認の必要有。
4.ご自宅の一部を、配偶者の贈与税額控除(2,000万円控除)により奥様へ贈与
⇒資産の分配を図る。
5.**市区画整理地については、区画整理完了前に、持分贈与を行う。
(土地の評価額の算定の為に、税務署に「個別評価」申請を行う。)
⇒区画整理による土地評価額上昇前に、資産の分散を図る。
6.小規模宅地の評価減の効果的な適用。東京都内の収益不動産の取得
7.銀行借入により収益物件を購入することにより、債務控除の適用による財産の圧縮を図ると共に、第三者からの収入増大を図る
8.同族会社株主
⇒名義株の有無の確認。
②所得に関する事項
1. 役員報酬・地代の見直し。
2. 資産管理会社を活用した、所得の分散。
3.土地の有効活用による第三者からの収入増大戦略。
⇒法人からの収入に依存するのでなく、収益構造の改善を図り安定的な収入割合を実現する。
③その他
1.法人個人間の各種契約書類等の整備。
2.法人経営の事業承継の計画。
成果:上記の「方向性」に基づき、現在下記対策を実行中です。
1. 資産管理会社新設法人の設立。
2. 自社法人で父から賃借している事務所建物を新設法人へ売却し土地のみ賃貸する。賃料は固都税の2~3倍を予定。それに伴い無償返還届を提出する予定だが、まだ未実行。
3. 自宅敷地の1/4(約2,220万円評価額相当)を配偶者へ贈与(贈与税配偶者控除)
4. **駅前駐車場の土地に2階建アパート建築しました。
5. 活用困難な遊休地を地元建売業者に売却し流動資金に組み入れました。
6. 相続財産評価減の為の1.5億円程度の都心部の収益不動産探索中
7. 不動産特定共同事業の共有持分を現金で取得し評価減を実施しました。
8. **市雑種地にサービス付高齢者住宅を建設準備中
9. 役員報酬、地代を見直しました。
10.事業縮小から廃業については今後提案していく
11.長男の自宅売却が終了したのでその資金の運用について今後提案していく